JTACの覚え書き #フィールドマニュアル

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はじめに

ArmA3でも航空機が登場するミッションがだいぶ増えてきましたね。
それと同時にFACやJTACといった役職のスロットも見かけるようになりました。
実際のミッションで以下の内容を全部こなす必要はありませんが、この機会にJTACの役割について知っておくとよりCoopを楽しめるのではないかと思います。

JTACってなんですか?

JTACとはJoint Terminal Attack Controllerの略称で、日本語に直すと統合末端攻撃統制官といいます。
米軍でこの呼び方が使われ始めたのは2003年ごろからで、それまではFAC(Forward Air Controller)とも呼ばれていました。

JTACの最も重要な任務は味方部隊の上空を飛行する友軍機の航空管制です。
その際に求められる大きな要素として、

  1. 味方の地上部隊への誤爆を防ぐこと
  2. 航空機の攻撃を誘導し戦果を確認すること
  3. 航空機へ適切な情報を伝達し脅威から遠ざけること

があります。

JTACは航空機の管制をすることが最大の任務ですが、現状では管制を行う上で統一した基準が設けられていません。航空攻撃の管制が曖昧であれば味方への誤爆のリスクは大きくなりますし、効果的な攻撃も行えなくなるどころか航空機が撃墜される危険性も高まります。
知識と技術を兼ね備えたJTACが作戦に参加しているだけで航空機はより効果的な攻撃を行えますし、適切な支援を受けた地上部隊は容易に任務を遂行できることでしょう。
 

JTACの仕事の流れ

それでは早速JTACが行う仕事を流れを追って見ていきましょう。
なおこれから解説していく内容はtriserverでのCoopで使いやすいように一部を改変しています。
またこれと同じことをしなければJTACになれないというわけでもないので、参考程度にみて下さい。

1. IP/BPの設定

IP (Initial Point) 航空機で使用します。攻撃を行う際はこの地点を必ず経由します。
BP (Battle Point) ヘリコプターで使用します。大抵はこの地点に留まって攻撃を行います。

JTACが最初に必ず行うべきことはIPやBPの設定です。IPやBPは航空機を誘導する際、基準となる地点になります。
例えば後述する9-Lineでも目標の情報はIPからの距離で伝えますし、攻撃のため進入するときには必ずIPを経由して飛行しなければなりません。JTACと航空機はお互いにIPの位置をしっかりと確認して攻撃に臨む必要があります。

ここではIPについて説明しますが、設定する際の注意点としては以下の3つが挙げられます。

  • AOから最低3km、通常は5km以上離しておく
  • IPは最低2つ以上設定する (BPはひとつでもOK)
  • 2つのIPはAOからみて直角になるように設定する

jtac解説1

このIPはできるだけブリーフィングの段階で設定するようにしましょう。ミッションによっては開始してからサイドチャットが使用できないものもあります。IPの名前は好きなように設定してください。

2. 航空機のチェックイン

ミッションが開始した後、JTACは航空機と交信を行うことになります。まず最初に確認しなければならないのは航空機の編成と装備です。ラジオチェックを兼ねて、あなたが交信している航空機が何を出来るのか確認しましょう。

JTAC Cosmo31, this is jackknife. Radio check.
Pilot Jackknife, Cosmo31. five by five.
JTAC Cosmo31, Jackknife, also clear. そちらの装備知らせ.
Pilot Jackknife, 30mm cannon, GBU-12×4, AGM-65×2.
JTAC Copy. IP MAZDAにて待機せよ.

3. Type of Control

航空機がどのような装備なのか確認できました。
あなたは前線に展開し、敵を発見します。さあ早速航空支援を要請する……前に知っておくべきことがあります。
JTACは航空攻撃を管制する役目を担っていますが、管制の方法は3種類に分けられることをご存知でしょうか。Type1, Type2, Type3とあり、それぞれ違った特徴があるので覚えておきましょう。

Type1 Control

1. JTACは一回一回の攻撃に許可を出す必要があります。
2. JTACは航空機が攻撃を行う際、航空機と攻撃目標の両方を目視し続けなければなりません。

Type1はJTACの管制方法の中でも最も厳しいものとなります。よく使われる場面を挙げると機銃掃射無誘導爆弾による低空爆撃でしょうか。
特に友軍部隊が近くにいるときなど、誤爆の危険性が高い場合に使用します。もちろんどちらかでも視認できなくなった場合には即座に攻撃中断の指示を出す必要があります。

Type2 Control

1. JTACは一回一回の攻撃に許可を出す必要があります。
2. JTACは航空機が攻撃を行う際、航空機や攻撃目標を視認する必要は必ずしもありません。

Type2はType1と同様に一回一回の攻撃に許可が必要ですが、Type1と比べて制限は緩くなっています。JTACは航空機や攻撃目標を視認する必要はありませんが、もちろん視認しているに越したことはありません。
こちらは大抵の場合LGBやJDAMなど精密誘導爆撃で使用されます。また攻撃目標の近くに友軍部隊がいない場合もType2を選択することがあります。ただし機銃掃射を含む無誘導兵器を使用する場合には、友軍部隊への誤爆の危険性を回避するため基本的にType1で行って下さい。

Type3 Control

1. 航空機は指定された区域内の複数の目標に対して自由に攻撃を行うことができます。
2. JTACは航空機が攻撃を行う際、航空機や攻撃目標を視認する必要は必ずしもありません。

Type1,2が似たような制約下にあったのに対し、Type3は少し違った種類の管制になります。航空機が一回一回攻撃をする度に許可を必要とすることはありません。
基本的にType3は「指定したエリアにいる攻撃目標には自由に交戦してよい」という意味になります。航空機はより多くの目標を短時間で攻撃することが出来ますが、その分誤爆の危険性は増大するでしょう。ですから原則としてType3の攻撃を行う際には、近くに友軍部隊が存在しないことが求められます。

誤爆のリスク 航空機の自由度 JTACの許可 主な使用場面
Type1 低い 低い 攻撃ごと 機銃掃射など
Type2 低~中 低い 攻撃ごと LGBやJDAMなど
Type3 高い 高い 最初のみ 友軍が近くにいない場合

4. CAS要請の流れと9-Line

それでは航空支援を要請する時間です。
上空を飛んでいる飛行機に対し、まずはどのTypeで攻撃の管制を行うか指定します。

JTAC Cosmo31, type1 in effect, say ready for 9-line.
Pilot Jackknife, Cosmo31. Ready receive 9-line.

ここでJTACは9-lineという9つの項目をパイロットに伝えます。予め指定されている項目を指定された順番に伝えることになりますから、航空機側にとっても伝えられたことを理解しやすいのがメリットです。

1 基準となるIP
2 IPからの方位
3 IPからの距離
4 攻撃目標の高さ
5 攻撃目標の種類
6 攻撃目標の座標
7 マーキングの方法
8 味方部隊の位置
9 離脱方法

実際に航空機に伝える際には、この番号は言いません。上から順番にどんどん伝えていくので、以下のようになります。

as FRAGGED
270
4.5km
20m ASL (ASL=海抜高度m)
T-72 in the runway
Grid 017016
Mark by Red smoke
East 700m, Troops in Contact
Egress south to MAZDA

一見すると暗号のようにも見えますが、上の表を見てみるとそれに沿って言っているのが分かります。
9-Lineのチェックシートをこのページの最後に添付しますので、それに書き込みながら確認していくとより覚えやすくなるのではないでしょうか。
ちなみにこれを書き連ねると、

IP FRAGGEDから方位270の方向4.5km、高度20mの滑走路に敵のT-72がいます。
座標は017016です、赤色のスモークでマークします。
味方部隊は東側の700mで、敵部隊と交戦中です。
攻撃後は南方向へ離脱し、IP MAZDAに向かって下さい。

となります。字でみれば分かりやすいですが、実際に聞くと聞き逃しそうですよね。それを防ぐためにも9-Lineという決められたプロトコルに則って交信するのです。ちなみにTroops in Contactは味方部隊が交戦中という意味を表す用語となっています。

Remarks

9-lineが終わると、続けてRemarksという補足事項を航空機に伝達します。

JTAC …Egress south to MAZDA. Advice ready for Remarks.
Pilot Roger, Ready to copy remarks.

パイロットは9-Lineを聞き逃していなければ、Remarksを聞く準備が出来たことをJTACに伝えます。Remarksは9-Lineでは伝えられない攻撃時の制約をパイロットに伝える重要な機会です。
主に以下のようなことについて補足していきます。

使用する兵器の種類/数 use cannon.
use gbu-12.
use rockets.
敵AAの情報(目標基準) zu-23, south 700m.
some manpads around the area.
味方のマーキング friendly marked by green smoke.
最終攻撃方位 final attack heading 240-300.
Danger closeか danger close!

補足する順番も表の上から下へとなります。
特に最後の赤字になっている2点については、パイロットは必ず復唱しなければなりません(後述)。
また最終攻撃方位とは、航空機が兵器を発射する際に向いていなければならない方位です。Danger Closeは現実になると武装ごとに細かい設定がありますが、Coopではだいたい200~300m以内と考えて下さい。

実際のCAS要請の流れ

JTAC cosmo31, jackknife, this will be type1 control, advice ready for 9-line.
Pilot cosmo31, ready for 9-line.
JTAC mazda
010
4.5km
8m asl
infantry in the open
grid 016018
mark by red smoke
east 900m
egress east to fragged
advice ready for remarks.
Pilot ready to copy remarks.
JTAC use cannon.
final attack heading 330-030.
Pilot infantry in the open, grid 016018, red smoke.
final attack heading 330-030.
JTAC read back correct. report ip inbound.
Pilot cosmo31.

実際に支援を要請する場合はこういった交信になります。
パイロットはRemarksを聞いたあと、青色で示された攻撃目標、座標、マークの方法を復唱します。また同時にRemarksで伝えられた重要な情報(最終攻撃方位とDanger Closeかどうか)も復唱します。こうすることによって、パイロットとJTACが同じ情報を共有できているかどうかを確認することが出来ます。

IPからの方位とOffset

9-LineでIPからの方位を伝える際に、Offsetというキーワードを使うことがあります。図を見て頂くのが一番早いので、下の図をご覧下さい。

jtac解説2

通常上の図の場合はOffsetがなければIP Chevyから直線で進入して攻撃します。しかしこの場合、例えば機銃掃射を南から北へ行うと味方部隊への誤爆の危険性が少なくありません。
Offsetを使うことによってWest側もしくはEast側に回り込んで攻撃させることが可能となります。このOffsetは誤爆を防ぐためや、地上部隊の照射したレーザーがきちんと跳ね返る方位から攻撃してもらう際に使います。
通常はOffsetで大まかな方位を指定したあとにFinal Attack Headingで改めて最終的な攻撃方位を指定します。

9-Lineでの用例:

CHEAVY
360 Offset West
3.8km
2080m ASL
T-72 in the open……

といった感じです。

Markの種類

Markは航空機に向けて攻撃目標の位置を示す重要な手段です。
以下にCoopで使うような大まかなMarkの方法を示しておきます。

no mark 文字通り目標のマーキングを全く行わないこと。
type3で交戦させるときによく使用するが、type1,2では使用を控えることが望ましい。
ただしGPS誘導のJDAMの場合も使う。
talk on jtacが地図や地形から声で目標の位置を知らせる方法。
目標を視認していてもマーキングが出来ないときに使う。
航空機側が目標を視認するのに時間がかかるのが難点か。
color smoke coopでよく使う方法の一つ。
目標付近にスモークを展開し、そこからの距離方位で位置を指示する。
簡単かつ効果的。
laser 誘導爆弾で攻撃する際に使う。
ロックできれば落とすだけなので分かりやすい。
IR pointer 銃についているIRレーザーのことで、夜間の誘導に使う。
レーザーとは言わずに必ずIR pointerということ。

5. 要請から攻撃まで

Type1とType2の場合

9-Lineでの要請が終わったら、いよいよ攻撃です。
まず航空機は9-Lineで指定されたIPまで向かいます。
そしてIPに到達したら航空機は必ず報告しないといけません。

Pilot jackknife, cosmo31, IP inbound.
JTAC cosmo31, continue.

JTACはそのまま攻撃態勢に入っても問題なければ進入を継続させます。
またIPを通過した時点を目処に目標のマーキングを行います。

JTAC Red smoke on the field.
Pilot Contact Smoke.

パイロットはスモークを確認した後に”CONTACT“という単語で確認したことを合図します。

JTAC Target is 50m south of smoke.
Pilot Tally Target.

パイロットは目標を視認できたら”TALLY“という合図で示しましょう。逆に視認できなければ”NO JOY“という単語を使います。どちらにせよパイロットは攻撃体制に入り、”IN FROM 方角”という単語を使って攻撃態勢に入ったことを知らせます。まだ攻撃指示は出ていませんので、攻撃はしてはいけません。

Pilot Cosmo31, In from south.
JTAC Cosmo31, CLEARED HOT!

JTACはパイロットが攻撃体制に入ったのを確認ししだい、”CLEARED HOT“という言葉で攻撃の許可を出します。もし攻撃を行うのを中止させたい場合は”ABORT ABORT ABORT“と言いましょう。

攻撃の許可が出れば、パイロットは攻撃を始めます。

用語 意味
contact jtacが示したマークなどを確認したこと
tally 攻撃目標を確認したこと
no joy 攻撃目標を確認できなかったこと
in from~ ~の方向から攻撃態勢に入ったこと
cleared hot 攻撃許可の合図
abort x3 攻撃中止の合図

またLaserをMarkに使用している場合は別の単語を使います。

laser on/lasing レーザー照射を開始する/しているということ
spot レーザーを確認しロックオンしたということ
negative laser レーザーを確認できない/ロックオンできないということ

Type3の場合

Type3の場合は、攻撃の許可を一回一回する必要はありません。
航空機のIP Inboundを確認したら”CLEARED ENGAGE“という言葉で交戦開始を指示します。
攻撃態勢に入った等の合図も必要ありませんので、好きに攻撃させましょう。

6. 攻撃から離脱

攻撃完了後、パイロットは”OFF“といって9-Lineで指定された方向に離脱します。
その際に攻撃を行っていれば”HOT“、何らかの理由で攻撃を行っていなければ”DRY“と言いましょう。

Pilot Cosmo31, OFF HOT, East.
JTAC Cosmo31, Jackknife, roger. Standby for BDA.
JTAC Cosmo31, Abort, Abort, Abort! Friendly is on the target.
Pilot roger, abort. OFF DRY to East. 

離脱した後はJTACからBDAが来ると思いますので、待機しましょう。
その結果によって、もう一度アプローチするか次の支援を待つかが変わります。

7. 一連の流れを追ってみよう

ここまで解説してきた一連の流れを実際の交信と同じような形で書いていきます。
CoopでJTACをやるときにも同じような交信をすると思うので、参考にして下さい。

jtac hog1, axeman radio check.
pilot hog1-1, loud and clear.
hog1 is two a-10 element with 30mm, gbu-12×4, agm-65d x4.
jtac hog1, roger.
type 2 in effect, advise when ready for 9-line.
pilot ready for 9-line.
jtac fragged
030 offset east
6.3km
343m asl
dash-k bunker on the hill
grid 012345
mark by laser
south 500m troops in contact
egress west to chevy
advice ready for remarks.
pilot hog1 ready to copy remarks.
jtac use gbu-12 each aircraft.
final attack heading 240-300.
pilot dash-k bunker, marked by laser, south 500m.
final attack heading 240-300.
jtac read back is correct.
report ip inbound.
pilot axeman, hog1, ip inbound.
jtac hog1, continue.
jtac laser on.
pilot hog1, spot.
in from east.
jtac hog1 is cleared hot.
pilot hog1.
pilot gbu’s away.
pilot hog1 is off hot, west.
jtac hog1, axeman, roger.
confirm direct hit, standby bda.
pilot hog1 roger.
jtac hog1, bda.
enemy bunker is destroyed.
good work, stand by for next 9-line.
pilot roger, standby.

7. おわりに

以上でだいたいの流れは掴めたでしょうか。あとはCoopでJTACをやっていけば、慣れていくと思います。
最後にパイロット、JTACの両方で使えるチェックリストを貼っておきます。ぜひこれを使ってミッションに望んで下さい。

チェックリストはこちら

それではCoopでお会いしましょう(^_^)

Smile wins.

タグ:
JTACの覚え書き #フィールドマニュアル” への1件のコメント
  1. Warlock より:

    すごい・・・!

  2. michy より:

    わかり易かったです。
    もしお時間があれば編隊飛行や攻撃方法等、初心者向けの航空機運用基礎についての解説も公開して頂きたいです。

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