はじめに
最近のCoopは参加人数が増え、平日で70人、Weekend Coopでは100人になることも珍しくありません。そんな中、航空機の登場機会も増えて、「航空管制官」という役職が度々登場するようになりました。
円滑な航空機の運用には管制官もそうですが、パイロットにもある程度の知識が要求されます。そこで、今回はArma 3のCoopにおける航空管制について、固定翼機・回転翼機パイロットの視点から解説していこうと思います。
注意
このページの内容はCoop向けに大幅にアレンジされたものです。
実際の航空管制とは異なる点がある事を理解した上でお読み下さい。
目次
- 航空管制とは?
- 必要な知識
- 管制の流れ
- 1. 出発から離陸まで
- 1-1. エンジンスタート
- 1-2. タキシング
- 1-3. 離陸
- 2. 着陸進入からスポットインまで
- 2-1. 滑走路などへの進入
- 2-2. 着陸
- 2-3. タキシングからエンジン停止まで
- 3. 正規空母や強襲揚陸艦(LHD)の場合
- 3-1. 正規空母の場合
- 3-2. 強襲揚陸艦(LHD)の場合
- 3-3. 艦船へ進入する際の共通事項
- 知っておくと便利なトラフィックパターン
- 終わりに
航空管制とは?
航空管制とは、航空機を安全かつ円滑に運行・運用するために指示や情報を送ることを指します。Arma 3のCoopにおける航空管制は
- 飛行場やその周辺における航空機同士の接触などの事故を防ぐ
- 飛行場内での移動や離着陸について必要な指示を与え、歩兵等との事故を防ぐ
- 航空機の補給について、空港クルーに必要な指示を与え、円滑な補給を行う
といったものがあります。
現実での航空管制は航空機の安全を守るため膨大な量のルールや規制の上に成り立っていますが、Arma 3では上の3項目を達成出来れば問題ないため、ハードルの高いものではありません。
また、ゲームのためにアレンジ・簡略化されているため、パイロットが覚えるべき項目はさほど多くありません。
日本語でも構いませんし、英語もいくつかの用語と文法さえ覚えてしまえば、実際の交信のようなカッコいいやりとりも決して難しくないでしょう。
それでは、ここからは実際にArma 3のCoopで必要になる知識や、管制の流れを説明していきます。
必要な知識
1. フォネティックコード
一般的な歩兵や通信手でも用いられますが、これらに比べ航空管制ではフォネティックコードが用いられる比率が高くなっています。既に解説のページがあるので、そちらで確認して下さい。
Arma3 フィールドマニュアル: Radio Telephone Operator 無線通信手
2. 滑走路番号
滑走路には必ず番号がついています。また、複数の滑走路を有する飛行場では数字に加え、末尾にアルファベットが付与されます。これらには規則性があり、次のようなルールに従って滑走路番号が決められます。
①滑走する方位の上2桁の数字が滑走路番号になる
2桁ではない場合は2桁になるように頭に0を補完する。例:×RW4 ⇒ ○RW04
②滑走する方位の下1桁が0度ではない場合、四捨五入か他の滑走路と重複しない数字になる
322度方向に向かって滑走する滑走路の場合は32もしくは33になる。
③同じ方向に並行する滑走路がある場合、数字の後に「L・C・R」のアルファベットがつき、
それぞれが区別される
なお、使用する滑走路はその時の風向きや天候によって決められます。
3. 誘導路
滑走路とスポット(駐機場)やハンガー(格納庫)などの間を走行・移動するための通路を
「誘導路 (Taxiway)」といいます。
一部の小規模な飛行場を除き、各誘導路には「A1」のようなアルファベット+数字(+東西南北区別用のアルファベット)で名前がつけられ、それぞれの誘導路が区別されます。
滑走路やスポット等へ移動する際、他機との衝突やヘッドオン(※)を防ぐため、目的地までの移動に経由する誘導路を指定されることがあります。
このため、パイロットも各誘導路の場所を把握しておく必要があります。
多くの誘導路を持つ空港において、経路指定が複雑で覚えきれない場合、管制官に移動先・経由指定を区切って送ってもらうことも出来ます。
※ヘッドオン…航空機同士が正面から進路が交差し、身動きが取れなくなる状態のこと。 航空機は後ろに下がる手段を持たないため、この状況に陥るとトーイングカーなどでどちらかを安全な位置まで後退させる必要があります。
4. 交信方法
一般的な歩兵や地上車両の無線交信では送信の際、最初に必ず自身のコールサインを
名乗りますが、航空管制における無線交信は少々異なります。
- 管制官のコールサインをつけて交信するのは周波数を変えてから最初の時だけ
- 返信するときは自機のコールサインを最後に言う
- いきなり本題に入る
- 付帯情報は復唱しなくて良い
- エンジンスタートの許可を得る
- タキシングの許可を得る
- 離陸の許可を得る
- 周波数変更の許可を得る
- 滑走路への進入許可を得る
- 着陸の許可を得る
- タキシングの許可を得る
- エンジン停止の指示を受ける
<Eagle1> | Tower, Eagle1. Radio check, how do you read? (Tower、こちらEagle1。交信試験です、感明いかがですか?) |
<Tower> | Eagle1, Tower. You’re loud and clear. How do you read? (Eagle1、こちらTower。そちらは感明良好です。こちらの感明はいかがですか?) |
<Eagle1> | Also, loud and clear. Radio check only. Eagle1. (Eagle1、そちらも感明良好です。交信試験のみです。) |
管制官を呼び出す際は送信相手を明確にするために自機のコールサインを最初に言いますが、返信ではこれが交信の最後に変わります。
<Eagle1> | Eagle1, on final. (Eagle1、最終進入中です。) |
<Tower> | Eagle1, runway 22L cleared to land, wind 240 at 3 knots(※). (Eagle1滑走路22Lへ着陸許可します、風は240度から3ノット(※)です。) |
<Eagle1> | Runway 22L cleared to land, Eagle1. (Eagle1、滑走路22Lへ着陸します。) |
一般的に無線交信で行われる
小隊本部 | 第1分隊、こちら小隊本部、送れ |
第1分隊 | 小隊本部、こちら第1分隊、送れ |
といった交信は無く、唐突に指示が送られます。
<Tower> | Eagle1, runway 22L line up and wait. (Eagle1滑走路22Lに進入し待機して下さい。) |
<Eagle1> | Runway 22L line up and wait, Eagle1. (Eagle1、滑走路22Lに進入し待機します。) |
管制官は指示以外にも様々な情報を教えてくれることがありますが、復唱が必要なのは指示だけで、
風の強さや他機の動向などの付帯情報を復唱するかはパイロットが判断して構いません。
<Tower> | Eagle1, wind 250 at 4 knots(※), runway 22L cleared for takeoff. Traffic Raptor1 is approaching IP North. (Eagle1, 風は250度から4ノット(※)です、滑走路22Lからの離陸を許可します。Raptor1がIP Northに接近中です。) |
<Eagle1> | Runway 22L cleared for takeoff, Eagle1. (Eagle1、滑走路22Lから離陸します。) |
※ノット…1時間につき1海里進む速度の事。 航空機における速度の表現には、主にこの「ノット」が使われています。 ノット - Wikipedia
管制の流れ
1. 出発から離陸まで
1-1. エンジンスタート
実際の航空管制ではエンジンの始動に管制官の許可は必要ありませんが、Coopでは駐機場や誘導路(場合によっては滑走路傍)に歩兵や車両が近づくため、航空機はエンジンスタートの許可を受けることが推奨されます。
なお、一般的に管制官のコールサインは「Tower」が用いられます。
<Eagle1> | Tower, Eagle1. spot1, request engine startup. (Tower、こちらEagle1。スポット1にいます、エンジンスタートの許可を求めます。) |
<Tower> | Eagle1, Tower. Cleared for engine startup. Report when ready taxi. (Eagle1、こちらTower。エンジンスタートを許可します。タキシングの準備が出来たら報告して下さい。) |
<Eagle1> | Cleared for engine startup, report when ready, Eagle1. (Eagle1、エンジンスタート、タキシングの準備が出来たら報告します。) |
誘導員からこの手信号(エンジンを始動せよ、アニメーション:Engines On)があった場合、管制官の許可が無くてもエンジンを始動して構いません。
許可を得られなかった場合、次のように交信します。
<Eagle1> | Tower, Eagle1. spot1, request engine startup. (Tower、こちらEagle1。スポット1にいます、エンジンスタートの許可を求めます。) |
<Tower> | Eagle1, Tower. Standby clearance. Infantry stand in your around. (Eagle1、こちらTower。待機して下さい。周りに歩兵がいます。) |
<Eagle1> | Standby, Eagle1. (Eagle1、待機します。) |
1-2. タキシング
エンジンの始動が完了したら、離陸に向けて待機地点まで
移動(タキシング)を行います。通常は経由指示に従ってタキシングします。
待機地点は滑走路の手前、他の離着陸をする機体に支障を及ぼさない地点の事を指します。
なお、固定翼機は前方からの風で揚力を生み出し飛行するため、基本的には向かい風を受けることが出来る滑走路へ誘導されます。
必ずしも、出発地点から一番近い滑走路へ誘導されるとは限りません。
<Eagle1> | Eagle1, request taxi. (Eagle1、タキシングの許可を求めます。) |
<Tower> | Eagle1, taxi to holding point A1 runway 22L, via T, T1, runway 22R. (Eagle1、滑走路22LのA1待機地点までT、T1、滑走路22Rを経由してタキシングしてください。) |
<Eagle1> | Taxi to holding point A1 runway 22L, via T, T1, runway 22R, Eagle1. (Eagle1、滑走路22LのA1待機地点までT、T1、滑走路22Rを経由してタキシングします。) |
このとき、滑走路上の移動時に実際には滑走路04Lの滑走経路でタキシングしていますが、
使用中の滑走路は22Rと22Lのため、移動する方向に関係なく移動・横断時の
滑走路の呼称は22Rと22Lとなります。
もし、具体的な誘導路の経由指定がない場合は、パイロットの判断により目的地へ最短経路で移動して構いません。
何らかの理由で途中までしかタキシングが許可されなかった場合、次のように交信します。
<Eagle1> | Eagle1, request taxi. (Eagle1、タキシングの許可を求めます。) |
<Tower> | Eagle1, runway 22L, taxi via T to holding point T1 runway 22R. Traffic Raptor1 is on final runway 22R. (Eagle1、離陸に使用する滑走路は22Lです、T経由で滑走路22RのT1待機地点までタキシングして下さい。Raptor1が滑走路22Rに向けて最終進入中です。) |
<Eagle1> | Runway 22L, taxi via T to holding point T1 runway 22R, Eagle.1 (Eagle1、離陸に使用する滑走路は22L、T経由で滑走路22RのT1待機地点までタキシングします。) |
同様に許可を得られなかった場合は次のように交信します。
<Eagle1> | Eagle1, request taxi. (Eagle1、タキシングの許可を求めます。) |
<Tower> | Eagle1, standby taxi. Due to traffic. (Eagle1、待機してください。他の機体がいます。) |
<Eagle1> | Standby, Eagle1. (Eagle1、待機します。) |
なお、回転翼機もタキシングを要求されることがありますが、回転翼機のタキシングは比較的高い操縦技術を要求されるので、自信がない場合は断っても構いません。
<Tower> | Chinook1, taxi to taxiway T1 via T, expect north bound departure. (Chinook1、誘導路T1へT経由でタキシングして下さい、北方向への離陸を予定しています。) |
<Chinook1> | Negative, unconfident. Chinook1. (Chinook1、自信が無いため出来ません。) |
<Tower> | Chinook1, roger. Standby next instruction. (Chinook1、了解しました。次の指示を待って下さい。) |
<Chinook1> | Standby next instruction, Chinook1. Thank you. (Chinook1、次の指示を待ちます。ありがとう。) |
1-3. 離陸
いよいよ離陸!といきたい所ですが、状況によっては他の機体を待つ必要があります。
滑走路周辺では「滑走路手前での待機」と「滑走路内での待機」があります。
先行して滑走路に進入している航空機がいる等の場合は滑走路の手前で待機を指示されます。
<Eagle1> | Eagle1, approaching A1. Ready for departure. (Eagle1、A1に近づいています。離陸準備は出来ています。) |
<Tower> | Eagle1, hold short of runway 22L. (Eagle1、滑走路22Lの手前で待機して下さい。) |
<Eagle1> | Hold short of runway 22L, Eagle1. (Eagle1、滑走路22Lの手前で待機します。) |
滑走路への進入に支障が無くなると、滑走路内での待機を指示されます。
<Tower> | Eagle1, runway 22L line up and wait. Traffic Raptor1 vacating runway. (Eagle1、滑走路22Lに進入し待機して下さい。Raptor1が滑走路から離脱中です。) |
<Eagle1> | Runway 22L line up and wait, Eagle1. (Eagle1、滑走路22Lに進入し待機します。) |
滑走路へ進入しても離陸してはいけません。原則的に滑走路は1機しか使用してはいけない
ため、管制官の指示があるまで離陸を待ちましょう。
離陸に支障が無くなると離陸許可が出ます。しばらく待っても離陸許可がない場合、
管制官が忘れている可能性もあるので存在をアピールしましょう。
<Eagle1> | Eagle1, ready. (Eagle1、離陸準備は出来ています。) |
<Tower> | Eagle1, wind 060 at moderate breeze(※) tail wind, runway 22L cleared for takeoff. (Eagle1、風は060度からやや強め(※)で追い風です。滑走路22Lからの離陸を許可します。) |
<Eagle1> | Runway 22L cleared for takeoff, Eagle1. (Eagle1、滑走路22Lから離陸します。) |
※管制官が具体的な風の強さを得られない場合、ビューフォート風力階級などを用いて 表現することがあります。 ビューフォート風力階級 - Wikipedia また、スクランブルなどの緊急を要する状況では追い風でも離陸許可を得られることがあります。
回転翼機の場合、支障が無ければヘリパッドやスポット(駐機場)から離陸許可を受けることも出来ます。
<Chinook1> | Chinook1, request takeoff from here. (Chinook1、この地点からの離陸許可を求めます。) |
<Tower> | Chinook1, wind calm, cleared for takeoff southeast bound. (Chinook1、風は穏やかです、南東方向への離陸を許可します。) |
<Chinook1> | Cleared for takeoff southeast, Chinook1. (Chinook1、南東方向へ離陸します。) |
離陸後、作戦周波数への変更が許可されます。
<Tower> | Eagle1, frequency change approved. (Eagle1、周波数の変更を許可します。) |
<Eagle1> | Frequency change approved, Eagle1. good-day. (Eagle1、周波数を変更します。さようなら。) |
<Tower> | Good-day. (さようなら。) |
あるいは
<Tower> | Eagle1, contact mission controller 32.0. good-luck! (Eagle1、32.0MHzで指揮周波数に切り替えて下さい。がんばって!) |
<Eagle1> | Contact 32.0, Eagle1. Thank you! (32.0MHzに切り替えます。ありがとう!) |
と交信することが多いです。
ここまでで離陸の一連の流れは終わりです。ここまでの流れを簡単に振り返ると
となります。
2. 着陸進入からスポットインまで
2-1. 滑走路などへの進入
帰投や補給・修理のために着陸をする場合、
まずは着陸する地点へ進入する許可を得なければなりません。
<Eagle1> | Tower, Eagle1. East 7 click from airport, request landing for rearm. (Tower、こちらEagle1。空港から東7kmの地点にいます、再兵装のため着陸許可を求めます。) |
<Tower> | Eagle1, Tower. Cleared for visual runway 04R approach from IP South. Report IP inbound. (Eagle1、こちらTower。滑走路04RへIP Southからの目視進入を許可します。IPへ接近次第報告して下さい。) |
<Eagle1> | Cleared for visual runway 04R approach from IP South. Report IP inbound, Eagle1. (Eagle1、滑走路04RへIP Southから目視進入します。IPへ接近次第報告します。) |
回転翼機の場合、誘導路やスポットへ着陸させるために
空港への接近のみ許可されることもあります。
<Chinook1> | Tower, Chinook1. Northeast 2 miles(※) from airport, request landing for change aircraft. (Tower、こちらChinook1。空港から北東2マイル(※)の地点にいます、機体変更のため着陸許可を求めます。) |
<Tower> | Chinook1, Tower. Proceed direct to HP East, report approaching Holding point. (Chinook1、こちらTower。HP Eastへ直行し、HPに接近次第報告して下さい。) |
<Chinook1> | Proceed direct to HP East, report approaching Holding point, Chinook1. (Chinook1、HP Eastへ直行し、HPに接近次第報告します。) |
※マイル…海里(Nautical Mile)、1マイル=1,852m。 航空機における距離の表現には、主にこの「マイル」が使われます。 陸上マイル(1マイル≒1.6km)とは異なるので、使う場合は注意しましょう。 海里 - Wikipedia
また、何らかの理由で進入許可出来ない場合、待機を指示されます。
<Eagle1> | Tower, Eagle1. South 8 click from airport, request landing for refuel. (Tower、こちらEagle1。空港から南8kmの地点にいます、燃料補給のため着陸許可を求めます。) |
<Tower> | Eagle1, Tower. You are number 2. Expect visual runway 04R approach, proceed direct and hold on IP South. (Eagle1、こちらTower。2番目の誘導になります。滑走路04Rへの目視進入を予定しています、IP Southへ直行し待機して下さい。) |
<Eagle1> | Number2, expect visual runway 04R approach, proceed direct and hold IP South, Eagle1. (Eagle1、2番目、滑走路04Rへの目視進入を予定、IP Southへ直行し待機します。) |
待機を指示された場合、進入に支障が無くなり次第進入が許可されます。しばらく待っても
進入許可が来ない場合、管制官が忘れている可能性もあるので存在をアピールしましょう。
なお、進入許可を飛ばし直接着陸許可を受けた場合は、
滑走路へ最短経路で進入して構いません。
2-2. 着陸
進入許可を受け滑走路へ近づけば、いよいよ着陸です。
何事も無ければ着陸許可を受け、着陸することが出来ます。
<Tower> | Eagle1, check gear down, runway 04R cleared to land, wind calm. (Eagle1、ギア(着陸装置)が出ていることを確認して下さい、滑走路04Rへの着陸を許可します、風は穏やかです。) |
<Eagle1> | Runway 04R cleared to land, Eagle1. (Eagle1、滑走路04Rに着陸します。) |
回転翼機やVTOL機の場合、誘導路やヘリパッドに着陸するように指示を受けることがあります。
<Tower> | Chinook1, taxiway T2 cleared to land, wind 050 at 3 meter per second crosswind. (Chinook1、誘導路T2への着陸を許可します、風は050度から毎秒3メートルで横風です。) |
<Chinook1> | Taxiway T2 cleared to land, Chinook1. (Chinook1、誘導路T2へ着陸します。) |
何らかの事情でゴーアラウンド(着陸復行、着陸のやり直し)を指示されることもあります。
ゴーアラウンドを指示された場合、再度進入許可を受ける必要があります。
<Tower> | Eagle1, go around, turn right and proceed direct to IP South. Departure traffic Raptor1 is still on the runway. (Eagle1、ゴーアラウンドして下さい、右旋回してIP Southへ直行して下さい。出発機のRaptor1がまだ滑走路にいます。) |
<Eagle1> | Go around, turn right and direct to IP South, Eagle1. (Eagle1、ゴーアラウンドして右旋回、IP Southへ直行します。) |
ここまで紹介してきた交信は全て、パイロットの判断で拒否しても問題ないものですが、
このゴーアラウンドの指示だけは緊急時を除き、パイロットは拒否してはいけません。
管制官からゴーアラウンドの指示を受けた場合は、素直に着陸をやり直しましょう。
2-3. タキシングからエンジン停止まで
スポットに直接着陸した回転翼機やVTOL機を除き、航空機は着陸地点からスポットまで移動してからエンジンを停止します。
まず、滑走路に着陸した航空機は、滑走路からの離脱指示を受けます。
<Tower> | Eagle1, turn left available taxiway. (Eagle1、離脱可能になり次第左折して誘導路に入って下さい。) |
<Eagle1> | Turn left available taxiway, Eagle1. (Eagle1、離脱可能になり次第左折して誘導路に入ります。) |
あるいは、具体的に離脱する誘導路を指定されることもあります。
<Tower> | Eagle1, turn left A1. (Eagle1、左折してA1に入って下さい。) |
<Eagle1> | Turn left A1, Eagle1. (Eagle1、左折してA1に入ります。) |
その後は出発時のものとほぼ変わりません。
<Eagle1> | Eagle1, A1, request taxi. (Eagle1、A1にいます、タキシングの許可を求めます。) |
<Tower> | Eagle1, taxi to spot1 via runway04L, T1, P1, P. (Eagle1、スポット1まで滑走路04L, T1, P1, Pを経由してタキシングしてください。) |
<Eagle1> | Taxi to spot1 via runway04L, T1, P1, P, Eagle1. (Eagle1、スポット1まで滑走路04L, T1, P1, Pを経由してタキシングします。) |
出発時と同様に、もし具体的な誘導路の経由指定がない場合は、
パイロットの判断により目的地へ最短経路で移動して構いません。
複雑な誘導路を持つ飛行場の場合、途中まで自力でタキシングし、途中からは空港の地上作業員による誘導が行われることもあります。
<Tower> | Eagle1, spot3, taxi via runway04L to T1. (Eagle1、目的地はスポット3です、滑走路04Lを経由してT1までタキシングして下さい。) |
<Eagle1> | Spot3, taxi via runway04L to T1, Eagle1. (Eagle1、目的地はスポット3、滑走路04Lを経由してT1までタキシングします。) |
… | … |
<Tower> | Eagle1, follow HMMWV your front, guide to spot3. (Eagle1、前のHMMWVに続いて下さい、スポット3まで誘導します。) |
<Eagle1> | Follow HMMWV, Eagle1. (Eagle1、HMMWVに続きます。) |
スポットに向かうとマーシャラー(誘導員)が前方に立っていて、 手信号により誘導してくれる事があります。 大型機や大きな回転翼機の場合は足下が見えにくいので、 手信号の意味を覚えておくと良いでしょう。
時折、「歩兵の集合地点付近で一度機体を止めて歩兵を降ろした後、
再度スポットへタキシングする」といったことを行います。
このようなときには、次のような交信が行われます。
<Tower> | Hercules1, taxi to P taxiway via RW04L, T2, P2. Follow marshaller guidance then stop on P. (Hercules1、誘導路Pまで滑走路04L、T2、P2経由でタキシングして下さい。マーシャラーの指示に従いPで停止して下さい。) |
<Hercules1> | Taxi to P taxiway via RW04L, T2, P2. Stop on P, Hercules1. (Hercules1、誘導路Pまで滑走路04L、T2、P2経由でタキシングします。Pで停止します。) |
… | … |
<Hercules1> | Hercules1, hold on P. (Hercules1、Pで停止中です。) |
<Tower> | Hercules1, deboard infantry, report complete deboarding. (Hercules1、歩兵を降機させてください、降機が終わり次第報告して下さい。) |
<Hercules1> | Start deboarding, report complete, Hercules1. (Hercules1、降機作業を開始します、完了次第報告します。) |
… | … |
<Hercules1> | Hercules1, deboarding complete. (Hercules1、降機作業が完了しました。) |
<Tower> | Hercules1, taxi to spot1. (Hercules1、スポット1へタキシングして下さい。) |
<Hercules1> | Taxi to spot1, Hercules1. (Hercules1、スポット1へタキシングします。) |
スポットイン(駐機場への停止)が完了するとエンジンを切るように指示を受けます。
<Tower> | Eagle1, shut down your engine. (Eagle1、エンジンを停止して下さい。) |
<Eagle1> | Engine off, Eagle1. (Eagle1、エンジンを停止します。) |
誘導員がスポット付近に立っている場合、誘導員からこの手信号
(エンジンを停止せよ、アニメーション:Engines Off)があることもあります。
この場合は管制官の指示がなくてもエンジンを停止しましょう。
ここまでで到着の一連の流れは終わりです。ここまでの流れを簡単に振り返ると
となります。
3. 正規空母や強襲揚陸艦(LHD)の場合
正規空母や強襲揚陸艦では通常の空港に比べ非常に狭く、運用も限られています。
また、船であるという特性上、固定されたIPやHPを持たない以外特に難しい指示は無く、むしろ普通の空港よりも簡単であると言えるかもしれません。
(Coop中では艦船が動くことはほとんど無いため、IPやHPが作られることもあります。)
3-1. 正規空母の場合
ほとんどの正規空母はアングルドデッキ上に滑走路を持っていますが、これを使うのは通常着艦時のみで、発艦時はカタパルトやスキージャンプ甲板を利用して発艦します。
なお、カタパルトからの発艦は「takeoff」ではなく「launch」を使います。
<Hornet1> | Hornet1, request taxi. (Hornet1、タキシングの許可を求めます。) |
<Nimitz> | Hornet1, taxi to catapult number 1, then connect and report when ready. (Hornet1、カタパルト1番までタキシングしてください、接続して準備が出来たら報告して下さい。) |
<Hornet1> | Taxi to catapult number 1, connect and report when ready, Hornet1. (Hornet1、カタパルト1番までタキシングします、接続して準備が出来たら報告します。) |
… | … |
<Hornet1> | Hornet1, ready. (Hornet1、準備完了しました。) |
<Nimitz> | Hornet1, catapult number1 cleared for launch. (Hornet1、カタパルト1番から発艦を許可します。) |
<Hornet1> | Catapult number1 cleared for launch, Hornet1. (Hornet1、カタパルト1番から発艦します。) |
着艦については、固定翼機の着艦する場所の呼称が「ランウェイ(滑走路)」ではなく「デッキ(deck)」になる以外に変わるところはありません。
<Nimitz> | Hornet1, deck is clear. Cleared to land, wind 020 at 3 knots. (Hornet1、甲板上は支障ありません。着艦を許可します、風は020度から3ノットです。) |
<Hornet1> | Cleared to land, Hornet1. (Hornet1、着艦します。) |
3-2. 強襲揚陸艦(LHD)の場合
強襲揚陸艦はカタパルトなどの発艦設備を持たないため、S/VTOL機についても回転翼機のように発進を開始する場所の指定があり、その地点から発艦を行う形式を取ります。また、航空機による自力発進のため、「takeoff」を使います。
<Harrier1> | Harrier1, spot9, ready. (Harrier1、スポット9番にいます、発艦準備完了です。) |
<Wasp> | Harrier1, wind calm, cleared for takeoff from spot9. (Harrier1、風は穏やかです、スポット9番から発艦を許可します。) |
<Harrier1> | Cleared for takeoff, Harrier1. (Harrier1、発艦します。) |
着艦については、強襲揚陸艦は滑走路を持たないため、全てスポットに対する着艦指示になります。
3-3. 艦船へ進入する際の共通事項
艦船は動くことが出来る性質上、IPやHPを設定しないこともあります。この場合、具体的な位置を指示するのでは無く、その艦船からの方角や右舷/左舷方向といった大まかな方向指示でカバーされます。
<Venom1> | Wasp, this is Venom1, mission complete, approaching from north, request landing. (Wasp、こちらVenom1です、任務完了しました、北から接近中です、着艦を要請します。) |
<Wasp> | Venom1, this is Wasp. Hold on port side, deck is busy. (Venom1、こちらWaspです。左舷で待機して下さい、甲板上が混雑しています。) |
<Venom1> | Hold on port side, Venom1. (Venom1、左舷で待機します。) |
知っておくと便利なトラフィックパターン
トラフィックパターンとは、滑走路を中心として設定されている離着陸のための周回経路のことを言います。日本語では「場周経路」と言います。
このトラフィックパターンはどの飛行場でも共通しているもので、これを知っておくと着陸までの時間の短縮や、航空管制の効率上昇に繋がります。
トラフィックパターンには滑走路を基準としてレフトパターンとライトパターンがあり、管制官から指定がない場合、レフトパターンを使用して飛行します。
滑走路からダウンウィンドレグまでの距離は機体の大きさによって異なりますが、戦闘機などの小型機は1~2km(1NM)、輸送機などの大型機は4~6km(2~3NM)とされています。
一般的に、到着する航空機がトラフィックパターンを用いて滑走路へ着陸する場合、
まずはダウンウィンドレグへ進入します。
<Eagle1> | Tower, Eagle1. North 4 click from airport, request landing for rearm. (Tower、こちらEagle1。空港から北4kmの地点にいます、再兵装のため着陸許可を求めます。) |
<Tower> | Eagle1, Tower. Runway 04R, enter left downwind, report turning base. (Eagle1、こちらTower。滑走路04Rを使用します、左トラフィックパターンのダウンウィンドに入って下さい、ターニングベースで報告して下さい。) |
<Eagle1> | Runway 04R, enter left downwind, report turning base, Eagle1. (Eagle1、滑走路04Rを使用、左トラフィックパターンのダウンウィンドに入ります、ターニングベースで報告します。) |
この場合、ターニングベースで報告の指示を受けているので、ダウンウィンドへ向けて旋回を始めたら、管制官に報告します。
<Eagle1> | Eagle1, turning base. (Eagle1、ターニングベースです。) |
<Tower> | Eagle1, runway 04R cleared to land, wind 050 at 8 knots. (Eagle1、滑走路04Rへ着陸を許可します、風は050度から8ノットです。) |
<Eagle1> | Runway 04R cleared to land, Eagle1. (Eagle1、滑走路04Rへ着陸します。) |
接近している方角が滑走路の進入方向に垂直に近い場合、直接ベースレグへ誘導されることもあります。
… | … |
<Tower> | Eagle1, Tower. Runway 04R, enter direct left base, report enter base leg. (Eagle1、こちらTower。滑走路04Rを使用します、左トラフィックパターンのベースレグへ直行して下さい、ベースレグに入ったら報告して下さい。) |
<Eagle1> | Runway 04R, direct left base, report enter base leg, Eagle1. (Eagle1、滑走路04Rを使用、左トラフィックパターンのベースレグへ直行、ベースレグに入ったら報告します。) |
あるいは、ファイナルアプローチへ直行できる位置にいる場合、そのまま最終進入の指示を受けることもあります。
… | … |
<Tower> | Eagle1, Tower. Runway 04R, make straight in, report on final. (Eagle1、こちらTower。滑走路04Rを使用します、最終進入コースへ入って下さい、最終進入に入ったら報告して下さい。) |
<Eagle1> | Runway 04R, straight in, report on final, Eagle1. (Eagle1、滑走路04Rを使用、最終進入コースへ入ります、最終進入に入ったら報告します。) |
ダウンウィンドを飛行している際、先行機との間隔が狭い場合はダウンウィンドのコースを維持し、管制官から指示があるまでターニングベースを見合わせます。進入再開の指示が出次第、ファイナルアプローチに向けて旋回を始めます。
<Tower> | Eagle1, extend downwind. (Eagle1、ダウンウィンドを延長して下さい。) |
<Eagle1> | Extend downwind, Eagle1. (Eagle1、ダウンウィンドを延長します。) |
… | … |
<Tower> | Eagle1, continue approach, report turning final. (Eagle1、進入を再開して下さい、ターニングファイナルで報告して下さい。) |
<Eagle1> | Continue approach, report turning final, Eagle1. (Eagle1、進入を再開、ターニングファイナルで報告します。) |
以上が大まかなトラフィックパターンの飛行方法になります。
間隔調整の方法は他にも様々なやり方がありますが、気になる人はご自身で調べてみて下さい。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
解説本文では英語と日本語の両方を記載していますが、序盤でも述べたように英語にハードルを感じる方は日本語で交信しても全く構いません。
主目的は事故を防ぐことにありますので、流れだけでも理解して地上の人たちに美しく統率の取れた飛行を披露しましょう。
また、航空管制に興味がある方は「ぼくは航空管制官」というゲームがおすすめです。
ぼくは航空管制官4 羽田2 (テクノブレイン)
このゲームはシングルプレイ専用、Steamでは販売されておらず、また価格も決して安いものではありませんが、ゲームを楽しみながら航空管制を勉強するにはとても良いゲームに仕上がっています。
また、鳥鯖航空部のNatriumさんが単語や標識の解説も含めた
更に詳しい資料を公開されています。興味のある方は是非ご覧下さい。
(ベータ版)鳥鯖航空部 管制マニュアル
もっと航空管制について詳しく知りたい方は、Flight Simulatorのコミュニティの
「VATJPN」を参照するのがおすすめです。民間機向けのものですが、大変詳しく解説されています。
VATJPN
大変長くなりましたが、以上で解説を終わります。
パイロットの皆さん、今日もご安全に!
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